、お前」
「何?」
「これはやっぱハズくねぇ・・・?」


高く高く澄んだ空、昼休みの常連で賑わう屋上
紅葉というには微妙なイチョウ、俺の膝にはのぬくもり



「何で?」
「いやホラ、他にも人いんだろ?」
「気にしすぎ!」


夏に比べて元気を失くした太陽、遥か遠い鳥の声
時折肌を刺す冷たい風、私の背には武のぬくもり



「だってよー・・・・・・」
「あたしだって『だって』よ」
「ん、何で?」


軽くなった二つの弁当箱、コンクリートの隙間の雑草
出来心での肩に顔をうずめれば、鼻腔に広がるのかおり



「だって、離れたら寒くて冬眠しそうになる」
「ははっ、それはちょっと困るかもな」
「でしょ?」


錆び付いたフェンスの向こうの街、車が行き交う交差点
体ごと向き直って武に抱き付けば、胸に沁み込む武のかおり











とくん










「おっ」
「あっ」





一瞬、一回だけ重なった二つの鼓動
ホントに一瞬だけ、と同じ血が流れたような気がして



「・・・凄かったね」
「おう、ヤベーな今のは」
「ホント」


武にしがみついたその時、二つの心臓が一緒に鳴った
何だかとても、二人がどこかで繋がってるような気がして



「ちょっと、鼓動早くねぇ?」
「何よ、武だって人のこと言えないじゃん」
「俺はいいんだって」


服越しに感じるの心臓の音は、とても幸せそうで
少しだけ俯いたその顔も、お世辞や自惚れなんかじゃなく、幸せそうで



「わ、ズルい!」
「まいったか」
「あたしも特別がいい!」


寄せた耳から感じる武の心臓の音は、何とも嬉しそうで
ちらりと見上げたその先の顔も、強調や過剰表現なんかじゃなく、嬉しそうで



「どーしよっかな」
「もう決めたもん、あたしも特別」
「うわ、俺の立場ねぇな」










とくん










「わっ」
「おぉっ」


(ヤバいって、真面目に嬉しいかも)
(わー・・・・・・ハズい!幸せすぎてにやける・・・!)


一つまた一つ
幸せの鼓動を刻む心