「サンタ、ねェ・・・・」
「何か言った?」
「いや」


街中がいやにロマンチックな雰囲気を醸し出しているから気になって、見廻りの途中でその辺の輩に吐かせたところ、今日はクリスマス・イヴという日であるらしい。詳しい話を聞けば、これも例に洩れずエイリアンどもが持ち込んだ文化で、 今夜サンタと呼ばれる赤い服を着た老齢の変質者が世界中の子どもたちにプレゼントなるものを配って回るという。この話を攘夷派による子どもを使った新たなテロであると勘違いした近藤さんと土方は、真選組の総力をあげてサンタを捕まえるとか何とか言って、さっき組のモン全員引き連れて出て行った。 俺はと言うと、そんな馬鹿げた茶番(テロなわけねーだろィ、街の雰囲気で分かんだろ土方コノヤロー)には付き合ってられないので、と二人で屯所待機と決め込んだ。


「総悟は行かなくていいの?」
「んなもん、行くだけ無駄でィ」
「ふふ、ま、その通りね」


『クリスマスのイベントをテロと勘違いするなんて、おっちょこちょいっていうか、みんな仕事バカよね』と言って、は笑う。『お前、クリスマスのこと知ってんのかィ?』と尋ねれば、彼女は得意げに答えた。


「クリスマス、っていうのはね、一応江戸じゃサンタが子どもに贈り物をする日ってことになってるんだけど、本当は大切な人、家族とかね、と過ごす日なんだって。今日は・・・・というより今夜はクリスマス・イヴっていって、クリスマスの前夜っていう意味。明日が本当のクリスマスらしいわよ。 まあ、何で今日がどうしてクリスマスっていう日になったかは知らないけどね」
「・・・・思ったとおり、下らねェ」
「そう?でもそのおかげで今私たち二人っきりよ」


家族とか・と言われても、俺はつい先日(のことのように思えるけど、いつだったかね、思い出したくねェや)最後の家族を亡くしたばかり。ふざけたイベントだ・と思った矢先に、その考え方は少しだけ改まった。なるほど、確かにおいしいシチュエーションってことか。ありがたいねェ近藤さん。 嬉しいことにも乗り気そうだし、そんじゃァ遠慮なく戴くとするか。

少し挑発的に俺を見ているを押し倒して、その両手首を頭の上で縛りつけながら、俺は言った。


「俺には、サンタは来ねーのかねィ?まだ未成年だぜ?」
「さあ?いい子の所には来るって話よ」
「・・・・・・他の条件は?」
「あら、いい子じゃないって分かってるのね、偉いわ総ちゃん」
「うるせェ」
「サンタは寝てる間に来るらしいけど」
「まじでか」


どーいうこった、世界の全てが今からの俺たちの背中を押してるじゃねェか。参ったねィ、来年も頼んだぜ近藤さん、土方のバカヤロー。そんなことを思いながらに口づけると、街中のいやにロマンチックな雰囲気に毒されたような気がした。


「プレゼントくだせェ、サンタさん」





Oh, Lord!
あなたがおあたえくださった、このよきひに、ぼくたちは。