「総悟、暑い」 「そうかィ」 「・・・誰のせいだと思ってんの?」 「アンタの幼児体温のせいでさァ」 「(こいつ・・・!)」 聞き捨てならないセリフをいけしゃあしゃあと言ってのけた、この暑い真昼間になぜか一人だけ涼しい顔をしている(気がする)こいつも、例に漏れず暑くないわけがないのだ。その証拠に、ヤツとくっついている背中がインフルエンザにかかった時みたいに熱い。で、私も暑い。 下着が肌にひっついて気持ち悪い。こういう場合人間ってどうにかしてこの不快な状況を打破しようとするものだと私は思ってたんだけど、あいにく例外がここに。あ、でも例外ってわけでもないか。だってこいつは超ド級のサディスト、サディスティック星の王子様(この際サディスティック製でもいい)の沖田総悟くんだもの、 この星の人間じゃないんだもの!なんて思考が逸れてしまうあたり、相当暑さにやられてきてると思う。早くどうにかしないと、こんな状況のせいで熱中症で倒れただなんて恥ずかしすぎる結果になりかねない。私の腰に手をまわして、私の背中に不必要なぐらいぴったりくっついて、 本当に一向に全くマジでリアルに実際全然ピクリとも動かない総悟に私は言った。 「だからさぁ、あんたがそうやってくっついてるから暑いんだって。何?気でも狂った?」 「そいつァ・・・・・・アンタの気のせいだろィ」 「いやいや絶対気のせいじゃないから!しかも後半シカト?ていうか離れて!」 「やだね」 「やだねじゃないよ、このままじゃ熱中症で二人とも倒れたらどうすんの?きっと明日から屯所中の笑いの種だよあたしたち。そんでこれからずっと馬鹿にされてからかわれて後ろ指さされながら一生を送るんだ・・・可哀想なあたし」 「傑作じゃねェか」 「どこが!あんただって一緒に馬鹿にされるんだからね、土方さんなんか日頃あんたが馬鹿にしてるその倍ぐらいきっと馬鹿にしてくるんだかr」 「ちょいと黙れやィ(土方なんて言うんじゃねェ)」 総悟がそう言って、私の口は閉じた。ていうか閉ざされた。塞がれたって言った方が正しいかもしれない。あの憎たらしいヤツの唇によって。 「なにすんの!」 「防音でさァ」 「ちょ、だからってそのあんたねぇ!」 「そんなカリカリしてっとこっちまで涼しいもんも暑くなっちまわァ」 「じゃあちょっと涼しくするのに貢献してよね!」 「じゃあその高血圧なアンタの首筋から血ィ抜いてやりやしょうか?」 『こいつで』と、総悟が手元に置いてあった愛刀に手をかけたので、あたしは出血多量で涼しく・・・ていうか冷たくなっていく自分を想像して泣きそうになった。だいぶ涼しくなった、いろんな意味で。こいつマジウザい上に怖い! 「あははいやだなおきたさん冗談ですよウソですだから刀から手はなしましょうよ」 「ウソつく奴ァ切り捨て御免だぜィ?」 「え!いやウソじゃないっすよ実は本心です暑いんです総悟だって暑いでしょ熱中症で笑われるの嫌でしょ!?だから離れてくーだーさーいー!」 「・・・アンタとなら、俺ァ熱中症でも熱射病でも脱水症状でもいっそ二人でドロドロに溶けて混ざっちまっても大歓迎なんだがねィ」 耳元で一気に囁かれた言葉で、私は危うく一人で溶けそうになって固まった。総悟の唇が満足そうに、でもいやらしく弧を描いた(気がした)。 人肌恋し、夏 (一緒なら、いいかもしれない) (分離できないぐらいぐちゃぐちゃになるまで混ざり合ってみようや) - 071009 拍手御礼
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